癌病棟からメリークリスマス

プロローグ   癌告知から手術前検査
2005.06.14 定期検診。年に一回の会社の定期検診だ。
この頃はまだ平穏で、自分の健康には寸分の不安もなかった。
2005.09.12 6月の定期検診でまた便潜血があったというので、再度検体を出す。3年前の検査から便潜血があるといわれるようになった。でも、まさか自分が癌に冒されているなんて、まったく思っていなかった。痔が混じってるんだぐらいの軽い気持ちで採便していた。
2005.09.16 会社の産業医岡医師から再検査結果が陽性だと告げられる。それでも、痔かもしれないなんて軽く考えていた。いやいやながらイースト21クリニックに大腸レントゲン予約。岡医師からは大腸内視鏡検査を勧められたが、未だ切迫感がなかった。
2005.09.30 イースト21クリニックで大腸レントゲン検査。尻の穴から看護婦が浣腸みたいのを刺してバリュームを注入。やはり恥ずかしい。レントゲンになんだか影が映っているという。いやな予感。
2005.10.07 検査結果を岡医師から聞く。ポリープがあって、ひとつがだいぶ成長して3センチぐらいらしい。もう待ったなしだ。日本医大第2病院に内視鏡検査申し込む。
2005.10.25 日本医大で尾形医師の説明聞く。尾形医師は岡医師と同窓で仲がいいらしい。癌の疑い濃厚とのこと。11月18日に内視鏡によるポリープ切除を予約。
日本医大第二病院
2005.11.11 手術前に今シーズン最後のダイビングをしようと沖縄慶良間へ。
3日間で7本潜る。自分が癌だなんて信じられない。
2005.11.18 日本医大で内視鏡によるポリープ切除。昨日の昼飯から病院食。夜はお粥に下剤。当日は朝から2リットルの下剤を、ゆっくり飲むように言われ1時間半かけて飲み干す。トイレに10回以上行く。色が取れて透明になるまでトイレ。

2リットルの下剤
一升瓶より多いわけだから大変だ

4時過ぎOKが出て処置室へ。2時間かかって終了。ひとつは取れたがもう一つは取れない。麻酔で寝ている間に終っていた。痛くも痒くもない。こんなことならもっと早くやっておけば良かった。

この日1日入院。この日は私の65才の誕生日。この年令になるまで入院したことはなかった。初体験である。19日退院。個室で1泊27,800円というから、まあそんなもんかと思っていたら、なんと倍の55,600円取られた。入院した日と、退院する日の2日分だという。これにはびっくりした。初めて知った。病院と温泉は一泊二日の概念が違うんだ。これは要注意。
2005.11.25 会社で岡医師からだと告げられる。うーん、ダメか。
2005.12.07 日本医大で尾形医師から癌告知S状結腸にかなり大きいポリープがあり、一部癌化しているという。こうなったらしょうがない。年末だけど新年に持ち越すよりは、今年中にやりたいと12月22日から入院、26日手術の予約をする。癌の深さは、切ってみないとわからないという。

癌の告知書
少し前ならこんな告知をされたら、
生きた心地はしなかったでしょうね。

手術は傷が小さくてすむ腹腔鏡手術と、傷は大きくなるが危険が少ない通常の手術とがあるそうだ。どちらにするかと言うから、岡医師と相談して決めると答える。
2005.12.09 岡医師と相談。腹腔鏡手術でやろうと決める。このほうが術後も楽だそうだ。ただ、経験が少ないと失敗することがあるらしい。

この日は、会社の忘年会。新横浜のホテルに400人集めて盛大に実施。咽頭癌と肺癌摘出の経験者H君と会う。自分が癌だと知らされたあとは、癌の経験者はなんだか懐かしい。この気持ち不思議だ。
2005.12.14 TAT社長会。岩月会長、深津社長に告げる。
夜、友人の吉田君、杉浦君と出陣式ということで、銀座たらふくでフグを食べる。値段の割には美味いフグだ。癌保険は60才以上は半分になるとおどかされる。
あとモンモとラチーカ。
2005.12.16 採血、心電図、胸と腹のレントゲン、腹と骨盤のCTスキャン。手術前に転移の有無を調べるという。インターネットで大腸癌の体験記を読んでいたら、この検査で転移が見つかって手術できなかった人の話が載っていた。急に不安になる。
2005.12.17 眼底検査、胸のCT。CTはまったく簡単な検査だ。こんなことならもっと早くやっておくんだった。眼底検査は瞳孔を開いて、眼底の血管の異常を発見する検査だそうだ。検査のあとしばらくは瞳孔が開いているので、病院から出たとたん、日の光がものすごくまぶしくて、歩くのが怖かった。
2005.12.19 仲間とそばを食う会。九段の田毎で鈴木、小山、斉藤、井上などと。やはり明日の結果が心配で、食欲無し。それでも銀座に回る。
2005.12.20 検査結果すべて心配なし。まずは第一関門通過だ。予定通り手術決行決める。
夜は早めのクリスマス。ニンニクをきかせたビーフステーキ。
2005.12.21 さあ、今日から入院モードだ。今朝の体重59.8キロ。
昼から病院食。グリコのエニマクリンCSという検査食。ゼリーミールとビスケット。どちらも甘くて美味しい。グリコもいろんなモノを作っている。改めて感心した。
昼食代わりのゼリーミール

あいおい損保東山氏来社。癌保険の請求方法を聞く。65才だけど満額出るそうだ。診断書を保険会社の書式で取るように言われる。まずは明日、病院で聞こう。

日本医大から電話。明日は13時半に来るようにと。2人部屋、4人部屋ともに空いてなくて6人部屋になったそうだ。まあ、しょうがないか。風邪ひいたことを話す。

夕食は病院用のお粥。やはりグリコだ。
2005.12.22 今朝の体重59.0キロ。あっという間のダイエットだ。病院から電話があって、午前中に来るようにと。パジャマに浴衣、タオルに洗面具、それに文庫本。陳舜臣の小説十八史略全六巻を読もう。ほかに司馬遼太郎の空海の風景上下も入れる。さて出陣だ。この続きは新年が明けてからになるのだろうか。


教訓その一 便潜血を軽く見るな!

そこで教訓。一年にいっぺんは人間ドックに入ること。そこでの検診結果を甘く見ないこと。

私の場合、検便は寄生虫の検査だと思っていた。無知もいいとこだ。便に混じった潜血で大腸癌の有無を見ているのだ。初期癌なら内視鏡で簡単に切除できる。私は甘く見ていて3年もほっておいたので、癌も成長してしまった。内視鏡によるポリープ切除は、無痛だし胃カメラよりよほど楽だ。こんな事なら早くやっておけば良かったと、今更のように悔やまれる。


癌病棟からメリークリスマス(手術のあとさき)へ

癌病棟から謹賀新年(病院で迎えた正月)