クラシックカメラ銘々伝
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 雌伏するキャノン一眼レフ
 キャノンフレックスR RP RM FX Pellix FT FTb F-1

雌伏10年という言葉がある。忍耐を重ね、実力を蓄えいつの日にか再起を図ろうと、ひたすら辛抱する日々を送ることだ。1960年代はキャノンにとって、文字通り雌伏10年であった。

1959年ニコンFに先駆けて発売したキャノンフレックスであったが、快調なスタートを切ったニコンFに圧倒的な差をつけられて、わずか3ヶ月で生産中止に追い込まれてしまった。

広角から望遠まで幅広く交換レンズを揃えたニコンに対して、標準レンズと100mmレンズだけしか同時発売出来なかったキャノン。プロ用としては準備不足は否めなかった。

1971年のキャノンF−1でようやくニコンを捉えたものの、それまでの10年間は苦悩の連続であった。なにしろミラーが上がったままになるという持病があって報道カメラマンに嫌われ、その評判が一般の愛好家にまでに及んだことが痛かった。

挽回を図るために、キャノンは様々な技術的挑戦を試みた。私が惹かれるのは、そうしたキャノン技術陣の試行錯誤の跡が、苦悩の痕跡がこの時期のカメラに残っていて、個性を際立たせているからである。判官贔屓も多少はあるかもしれないのだが。

第1世代 Rシリーズ Rレンズ レンズに自動絞り機構を組み込む。 
キャノンフレックスR (1959年) 
 
 Canonflex R+Super-Canomatic R 50mm F1.8

1959年、ニコンF発売の情報に慌てたように、大急ぎで市場投入したキャノンフレックスだったが、わずか3ヶ月、17,000台で生産中止に追い込まれてしまった。

スーパーキャノマチック
と名付けた自動絞り機構は、レンズ側に絞り駆動バネを内蔵し、巻き上げ時にそのスプリングをチャージするといった独特なメカになっていて、 巻き上げにトルクがかかって重い印象を与えた。初期トラブルも多かったので、プロカメラマンから不評を買ったのが痛かった。

ペンタ部を黒塗りにし、セルフタイマーのレバーをリング状にしたりと、デザイン上でユニークさを出そうとしたが、亀倉雄策デザインによるニコンFの洗練されたフォルムにかなわなかった。

ニコンに手痛い敗北を喫して、早々に市場から消えていったので、それが今となっては希少価値が出て、市場では比較的高値で取引される。

 
 外付けの露出計

外付けの露出計キャノンメーターをセットすると、シャッターダイヤルに連動して、適正絞り値が読み取れる。セレン露出計なので今となっては、機能する個体は少ないが、私の所にやってきたメーターは立派に動いた。ラッキーである。
 
 
 トリガーレバー

巻き上げはキャノンVTのようにトリガーレバーとしたが、三脚にセットすると、巻き上げがやりにくいことから、これもプロに敬遠される要因となった。

レンズマウントは、レンズ側のリングをボディー側のマウントに合わせて回転させる方式で、キャノンがブリーチロック式と呼んでいる特殊なマウントである。 一般にはスピゴットマウントと呼ばれる方式だ。このマウントは、のちのFLマウントやFDマウントに引き継がれるが、自動絞り機構が微妙に違うので要注意である。FLやFDマウントのレンズをR型のボディーにつけても、自動絞りは働かない。

RマウントやFLマウントのキャノンレンズは、絞りリングが2重になっている。前側の絞りが自動絞りリングで、指示した絞り値まで自動的に絞られる。ボディー側のリングは、マニュアルのプリセット絞りで、このリングで絞り値をセットすると、自動絞り機能はキャンセルされる。うっかり回さないように注意が必要だ。

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江戸川 枯れ木

外付けの露出計は快調である。非常に使いやすい。このカメラ、不人気だったがさすがキャノン、撮っていて気持ちが良い。写りもご覧の通りだ。

春の子供

2015年3月30日の新宿御苑。ソメイヨシノの満開に誘われて、朝早く入園。ゆったりと桜を楽しんだ。ピンクの陽光がきれいだった。

ドクターイエロー

東海道新幹線で時々見かける黄色い新幹線、ドクターイエローに出会った。ネットの予告を信じて、田町のホームで待っていたら、定刻通りに通過した。でも、その前に車庫から東京駅に向かうドクターイエローを発見、夢中でシャッターを切った。

キャノンフレックスRP (1960年) 

Canonflex RP+Super-Canomatic R 50mm F1.8

初期ロットの在庫一掃を待って、1960年に後継機としてキャノンフレックスR2000と、その廉価版のRPを発売した。1/2000を省略し、ファインダーを固定式にしたRPは、61,000円のR2000に対して48000円と大幅に価格を下げ、幅広いユーザーを取り込もうとした。
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お狐様 オシャレな案内板

2015年正月、おだやかに明けた。左は豊川稲荷、右は銀座で出会った。トリガーレバーはスナップにはたいへん使いやすい。

派手ハーレー

趣味にもいろいろあるもんだ。これはまた超ハデなハーレーダビッドソン。

 
   
 正月の銀座  夕時の秋葉原
   
   
 神田連雀町  あんこういせ源


キャノンフレックスRM (1962年)
Canonflex RM+Super-Canomatic R 50mm F1.8

セレン光電子の露出計を内蔵した。そのために軍艦部が多少厚くなり、ペンタ部が沈み込んだように見える。デザイン的には好みが分かれるところだが、私は好きなフォルムだ。

 軍艦上部

シャッターダイヤルを回すと露出計の絞り数値が変化し、指針が適正絞りを示す。今となっては露出計が動くものは少ないが、幸い私の手元に来たRMは、見事に動いた。

それまでのトリガーレバーを、埋め込み式の巻き上げレバーに変更した。フィルムカウンターは懲りすぎていて見にくい。

標準レンズのキャノマチック50mmF1.8をつけて、冬の武蔵野へ出かけた。
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 武蔵野  深大寺
   
   
 わらの羊  羅漢像
   
   
 巣鴨にて  荒川電車




第2世代 Fシリーズ FLレンズ  自動絞りをボディーに、露出計をcds化  
キャノン FX (1964年)
 
 Canon FX+Canon FL 50mm F1.8

苦戦したRシリーズに代わってキャノンが投入したのがFシリーズである。自動絞りの制御をレンズ側から一般的なボディー側に変更した。従って、Rシリーズ用のキャノマチックレンズは、Fシリーズに装着は出来るが自動絞りは使えない。逆ももちろん駄目だ。Fシリーズ用のFLレンズは、Rシリーズに装着は出来るが、自動絞りは使えない。

フィルム巻き上げもRシリーズのトリガーレバーから、普通のトップレバーになった。内蔵露出計はCds露出計になり、感度切り替え式で暗所で威力を発揮する。

 
 Cds露出計

Fシリーズからカメラ名のフレックスが無くなった。そして、ゴシック体だったCanonのネームもに統一されている。なにかと個性的だったRシリーズに代わって、ごく普通のカメラになったという感じだ。使いやすくなり信頼度は増したが、面白さは無くなったように思える。
 
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 金のうんこを売る店  だるま店

キャノンFXに50ミリ標準レンズをつけて、暮れの柴又に出かけた。Rシリーズの独特の操作法から、オーソドックスなカメラになって、ずいぶん使いやすくなった。 

   
 柴又駅前  はいピース!

Cds露出計の感度は良好で、明るいところはもちろん、暗い室内でも適正な露出をガイドしてくれた。

 Canon FX+Canon FD 35mm F3.5

FX以降のモデルには、キャノンFDレンズも装着可能だ。キャノンF−1発売と同時に投入された、TTL開放測光に対応したFDレンズだが、FXにつけても自動絞りは問題なく駆動する。FDレンズは市場に豊富にあるので、たいへん重宝する。
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中山法華経寺

 
 
キャノン ペリックス (1965年)
Canon Pellix+Canon FL 58mm F1.2

キャノン初のTTL測光機だが、このカメラの特徴はなんと言っても半透明のペリクルミラーの採用で、ミラーが動かないことだ。スローシャッターを切っても画面が消えることはない。ミラーショックがないのでシャッター音は軽快だ。TTL測光も撮像面で測光するので、正確に測ることが出来る。絶対測光とも呼ばれた。

技術的には大変な意欲作なのだが、いかんせんハーフミラーなので、入光量は撮像面に70%、ファインダーに30%と分散される。その分ファインダーが暗くなり、いささか見にくい。キャノンではそのためにF1.2という大口径レンズを用意したのだが、ファインダーが暗いのは致命的で、画期的技術と宣伝しても、実際の需要は伸びなかった。

明るいF1.2の標準レンズをつけて、街に出かけた。
 
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 船橋駅前
 
F1.2のレンズと言えば恐ろしく高価なレンズを思い浮かべるが、ペリックス用のFL 58mm F1.2は嬉しいことに庶民にも手が届く。さすがにこのレンズを付けるとペリックスのファインダーは明るく、快適である。これで開放測光なら言うこと無しなのだが、絞り込むと暗くなってちょっと残念。まあ、一度露出を決めてしまえば、後は快適だから文句は無いのだが。

 
   
江戸川河川敷 
 
このレンズは1964年発売だから必ずしもペリックス用というわけではないが、ファインダーの暗いペリックスにはうってつけだ。5群7枚構成で1968年のFL 55mm F1.2に引き継がれた。

保線車 D51とおっさん

2015年4月3日、AJCC撮影会の下見に、群馬の鉄道公園に行ってきた。曇り空だったがペリックスは快調だった。

 
  
 Canon Pellix+Canon FL 19mm F3.5 R

1965年発売の超広角レンズである。前年に発売された19mmレンズは、バックフォーカスの関係でミラーと干渉するので、ミラーを撥ね上げてから装着しなければならなかった。それではせっかくの一眼レフのメリットが生かせないと開発されたのが、この19mmRである。は逆望遠という意味のRetrofocusである。8群9枚という贅沢な仕様で、大変な人気を博した。

フランスのアンジェニュー社が1950年に世に出した35mmF2.5が、世界初のスチルカメラ用レトロフォーカスレンズということになっているが、このタイプの広角レンズは、1960年代になってもドイツのフレクトゴンやディスタゴンなど数えるほどしかなく、ニッコール20mmや前述のキャノン19mmもミラーアップしなければ使えなかった。それだけに当時としてはこの19mmRレンズは、画期的でたいへん貴重であった。

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 クラシックカーのパレード
   
   
元気なご老体 隅田川
   
   
新宿御苑

 
 Canon Pellix+Canon FL 200mm F4.5
スリムで格好いい超望遠レンズだ。F4.5と暗いのでペリックスには不利だが、200mmにしては小型なので便利に使っている。

2016年1月27日、浅草で5代目中村雀右衛門の襲名披露のお練りがあった。200mmの望遠は大活躍だ。

 
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お練りを待つ子等 
寒波が去って抜けるような青空。最高のお練り日和だ。
 
   
5代目雀右衛門のお練り道中 
 

 
キャノン FT (1966年) 
 
Canon FT QL+Canon FL 50mm F1.4

懲りすぎたペリックスで失敗したキャノンは、翌1966年、TTL測光で普通のクイックリターンに戻したキャノンFTを投入する。当時はTTL測光はもう珍しくなくなっていたし、しかも他社は開放測光に移行しているのに、相変わらず絞り込み測光で、目新しい特徴は何も無かった。

そこで、フィルム装填を簡単にしたクイック・ローディング機構を採用し、売り物にしたのだが、かえってやりにくいと不評だった。

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冬の谷津バラ園

快調に動いたが、現像してみるとシャッターがいかれている。ミラーが上がりっぱなしになるので変だなとは思っていたのだが、まともに写っていたのは、この2枚だけ。FTはこれで4台目だが、1台もまともに動かない。このあたりがプロに敬遠されたゆえんだろう。

五重塔 中山の赤門

気を取り直して、もう1本フィルムを詰めて1/250で撮ってみた。今度は大丈夫。高速シャッターの動きがおかしい。バラさなくては。

 観音菩薩  ノラネコ

露出計はまず正確のようだ。TTL測光はこういう被写体に威力を発揮する。

 
 第3世代 F−1シリーズ FDレンズ  キャノンフレックスの完成形
キャノン FTb (1971年)
 
Canon FTb+Canon FD 20mm F2.8

キャノンFTbはFTの後継モデルだが、FTとは全く別物である。同時発売のキャノンF−1の普及版といった方が適切であろう。開放測光TTLでファインダーは交換出来ない。開放測光機構を持ったFDレンズを使用する。絞り込み測光も可能で、FLレンズも使える。 

キャノンはこの年から反転l攻勢に出て、ニコンの牙城を脅かしていく。

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 川崎大師  大道芸人

キャノンFTbに付けていったのは、1973年発売で開放測光に対応したキャノン FD 20mm F2.8である。前出の19mmF3.5を発展させ、当時世界最高のF2.8という明るさを実現したレンズだ。9群10枚という豪華な構成で、最短撮影距離はなんと20cmという超広角マクロレンズである。

 
   
 タン切りのど飴 

2015年1月14日、AJCCの仲間と川崎大師に参詣、門前町でリズミカルな飴切りを楽しみ、300年続く老舗でハマグリ鍋に舌鼓を打った。

 
   
 ハマグリ鍋  怪しい3人

キャノン F-1 (1971年)
 Canon F-1+Canon FD 50mm F1.8
打倒ニコンFを目指して試行錯誤したキャノンフレックスだったが、1971年にいたってついに念願を果たした。キャノンF−1の発売である。カメラだけで820g、標準の50mmレンズを付けると1080gという超重量級カメラだ。このモデルでようやく開放測光を実現した。

このモデルはこの先、多少の改良を加えながら10年以上キャノンのフラグシップ機であり続けた。

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六義園にて


 Canon F-1+Canon FD 50mm macro F3.5

1973年の発売。4群6枚構成のマクロレンズで、最短撮影距離は23cm。発売当時は4万円以上の値が付いていたが、今は数千円で手に入る。1/2倍まで撮影可能な本格派マクロレンズである。

 
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法華経寺の蓮

   
 アジサイ  雨の子供
 
 
   
未央柳 



クラシックカメラの物語


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