クラシックカメラ銘々伝
日の丸コンタックス レチナ賛歌 愛しのコニレット 孤独なライカ テッシナの秘密 ミノックス秘話 ニコン神話  I love EXA 
   


伝説のペンタックス

旭光学は日本のカメラを世界に広めた功績で、ニコンやキャノンに匹敵する、いやそれ以上に記憶されるべき会社である。一眼レフの欠点とされたシャッターを切るとフィンダーがブラックアウトする問題を、ミラーのクイックリターンで解決した。さらにレンズを通過した光量を、直接測定するTTL露出計を内蔵したペンタックスSPを、世界に先駆けて発表した。(販売はトプコンに先を越されたが)

レンズマウントに、当時の世界標準であったM42マウントを採用したのも、広く世界で愛される要素のひとつであった。アサヒ・ペンタックスはビートルズカラヤンなど、世界の著名人に愛されたカメラであった。

アサヒ・ペンタックス S1a (1962年)
 
 Pentax S1a+Super-Takumar 28mm F3.5
アサヒ・ペンタックスは後にAP型と呼ばれるオリジナルから、半自動絞りにしたK、シャッターダイヤルを1軸不回転にしたS2、完全自動絞りのS3、セルフタイマーを付けたSV、そしてTTL測光の露出計を内蔵したSPへと発展した。S2の前にS型があるのだが、試作だけで市販されなかった。

写真のS1a型はS3から1/1000を省略した輸出仕様である。主としてヨーロッパ向けとされたから、日本での流通は少ない。

このモデルが注目されるのは、ビートルズ伝説があるためである。1964年のアメリカ公演の時に、彼らはペンタックスで旅人のようにたくさん写真を撮った。ビートルズ・アンソロジーの中には、ポール・マッカートニーのこんな回顧談が収録されている。

”We took a lot of photos,We were like tourists with our Pentax cameras.

 
飛行機の中で 
リンゴ・スターとペンタックスを持つジョージ・ハリスン

1964年公開のビートルズが出演した映画"A Hard Day's Night"、邦題「ビートルズがやって来る、ヤア、ヤア、ヤア」の中では、リンゴ・スターがペンタックスを持って、ロンドンの町を走り回る。

ペンタックス S1を構えるリンゴ・スター
この映画で使われたペンタックスが何型だったか諸説あるのだが、有力な説にSVではないかというのがある。ところがSVにはセルタイマーが付いている。映画の中の次のシーンで、リンゴが長いレリーズで自分撮りをしているので、SVではないことがわかる。

長いレリーズで自分撮りをするリンゴ・スター
旭光学は国内向けにブラックボディーを出すのは、SP型からだったという。飛行機の中のペンタックスには、外付けの露出計がついているので、SPでなない。とすれば輸出仕様でヨーロッパ向けだったS1かS1aということになる。S1は半自動絞り、S1aは完全自動絞りだが、そのどちらだったかは決め手に欠ける。しかし、ジョージ・ハリスンが持っていたカメラが、オークションに出されたことがあり、そのモデルはS1aであった。

最近になって異説があることに気づいた。AJCC会長の高島さんから、SPより前のS2時代からブラック仕様があるよと聞いた。また、このサイトの読者からもメールで同様のご指摘を受けた。S2は1959年に出たモデルで、1962年のS1より古いのだ。謎は深まる。
Pentax S1a+Super-Takumar 28mm F3.5+Meter
ビートルズが持っていたのと同じメーター付きのペンタックスS1aが、ロンドンからやってきた。メーターは残念ながら動かないが、カメラは快調に動く。ビートルズになった気分で町に出かけた。
(クリックすると大きくなります。)
ロールスロイス 日比谷公園
見慣れた日比谷の風景も、なんとなく英国ムードが漂うのは、気のせいだろうか。

 
旗艦三笠をバックに   枝垂れ桜
 
2014年3月23日、家族で横須賀へ行った。戦艦三笠が迎えてくれた。少し露出がオーバー気味だ。

新宿御苑の枝垂れ桜。2014年3月29日に満開になった。一段絞りを絞って撮影。シャッターが遅いのかもしれない。これで適正だ。

   
 明日開通の新虎通り  枝垂れ桜

2014年3月28日、史生子と開通前の新虎通りを見に行った。

翌日は新宿御苑で満開の枝垂れ桜を満喫した。今年は例年より遅い開花だったが、彼岸を過ぎて気温が上がり、この日は20度を超える春の日であった。

 
アサヒ・ペンタックス SP (1964年)
 Pentax SP+Super-Takumar 55mm F1.8
アサヒ・ペンタックスSPは、1964年の発売だが、1960年のフォトキナで発表されて大反響を巻き起こした名機である。正確な露出を得るために、実際にレンズから入ってくる光を、直接測定しようという画期的発想のカメラであった。SPが採用したTTL測光は、望遠レンズにしても、広角レンズにしても入射光の角度によって生まれる露出誤差が、全く無いという理想の技術であった。世界中からその販売が待たれたカメラだった。

ペンタックスSPの伝説はこうだ。1966年にカラヤンに率いられたベルリンフィルが、日本にやってきた。ベルリンフィルは2度目の来日だったが、彼らの目的は演奏のほかにもあった。それは、東京でペンタックスSPを買うことだった。宿泊した帝国ホテル近くの免税ショップに、カラヤンをはじめオーケストラのメンバーが大挙しておしかけた。この時、このショップでは、なんと95台のペンタックスSPが売れたという。

Herbert von Karajan
そのうちの大部分はボディーだけだったと伝わっている。なぜSPのボディーだけが大量に売れたのか。それはレンズマウントが、M42であったからである。つまり、露出の失敗が無いペンタックスSPに、母国ドイツが誇るカール・ツァイス製の優秀なレンズをつけたかったのだ。ニッコールしか付けられないニコンFではなく、世界標準のM42マウントを採用したペンタックスSPが欲しかったというわけだ。

 Pentax SP+Super-Takumar 28mm F3.5
ペンタックスSPのブラック仕様が手に入った。SPは世界中で180万台も売れた大ベストセラーなので、中古市場では割安だ。千円、2千円で手に入ることも珍しくない。しかし、シャッターは切れても肝心の露出計が動かないものが多い。SPの最大の魅力が、TTL測光なのだから、露出計が生きているかどうかを見極めて購入したい。

 LR41
SP用の水銀電池は生産されていないが、市販のLR41かSR41で代用出来る。ただ、径がかなり小さいので、そのままではぐらぐらする。私は無頓着なので、そのまま+を奥にして放り込んでいるだけだが、気になる人は、何かスペーサーを工夫して固定すれば安心だろう。

 
水道用のパッキン(PP40-12×8)
スペーサーの代用品を見付けた。ホームセンターで水道用のパッキンが目についた。サイズがたくさんあるが、外径12mm、内径8mmの補修用パッキンがちょうどぴったりだ。2個入って100円。LR41がピタッと収まる。SPにもあつらえたようにうまく収まった。

幸いこのブラックSPは露出計が生きていた。さっそく試写に出かけた。

(クリックすると大きくなります。)
東京駅 ガード下の風景
露出の難しいコントラストの強い風景を狙ってみた。SPはスポットマチックの略だが、実際は画面全体の平均測光である。だから、このようなコントラストが強い被写体でも、破綻をきたしていない。SPの面目躍如といったところである。

修禅寺寒桜
2014年3月21日、新宿御苑の修禅寺寒桜が満開だった。今年は例年より開花が遅れていたが、この日は青空にも恵まれて、春らしい写真が撮れた。 

 
 Pentax SP+Tessar 50mm F2.8
M42マウントのテッサーは、1948年のコンタックスSの標準レンズとして登場した。アルミ鏡胴のプリセット絞りであった。TTL測光のペンタックスSPが爆発的に販売を伸ばすと、それに対応して1960年代後半に、完全自動絞りで鏡胴をゼブラ調にしたテッサーが発売される。

カラヤンとベルリンフィルのメンバーが使いたかったのは、この組み合わせであったろうか。 カラヤンを気取ってゼブラ鏡胴のテッサーを付けて町に出た。
 (クリックすると大きくなります。)
 
あじさい 花菖蒲
テッサーらしい非常に解像感の優れた描写をする。

銀座にて 谷津バラ園にて


 
 Pentax SP+Tessar 50mm F2.8
1970年代に入ると黒鏡胴となり、東西両ドイツのカールツアイスか同じテッサーが発売される。西側のモデルにはCarl Zeissとだけ、東側のモデルにはCarl Zeiss Jenaと刻印されている。のちにはCarl Zeiss Jena DDRという表示なった。
 
 (クリックすると大きくなります。)
例大祭の靖国神社 関山
4月23日、春の例大祭の靖国神社。老いも若きも外国人ものどかに平和を謳歌している。

新宿御苑で名残の八重桜関山のアップを狙った。テッサーらしい美しい描写である。

 若葉  ネコ
5月の日比谷公園。若葉と光が美しい。ノラもまったりと暮らしている。 

 
 
 


クラシックカメラの物語


ご感想などお寄せください
Email komatsu@st.rim.or.jp