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デザインのイタリアカメラ   FerraniaLince3 Condol CometV Ducati Sogno

イタリアはデザインの国である。アルマーニやフェラガモ、ブルガリの活躍する国である。自動車でもアルファロメオ、ランボルギーニ、フェラーリ、ランチアなど、ドイツや日本の量産型自動車とは、ひと味もふた味も違う華麗で、自己主張の強烈なスーパーカーを世に送り出してきた。


カメラの世界でもイタリアは個性豊かだ。デザインが秀逸なのだ。それに職人気質とでも言うのだろうか、作りが丁寧で精密な加工が特徴である。その代わり量産には向かない。自動車と相通ずるところがある。流通量が少なく、おそろしく高価なのも、イタリアンスーパーカーとよく似ている。

フェラーニア リンス3  (1962年) 

Ferrania Lince 3+Cassar 45mm F2.8

フェラーニアはイタリアのフィルムメーカーである。コダックもアグファもフジも小西六も、みんなカメラを作ったように、フェラーニアも普及機、中級機を世に送っていた。このフェラーニア・リンス3は、フェラーニアブランドの中では高級に属する機種で、ブライトフレームの入ったファインダー、セルフコッキングのシャッター、レバー巻き上げなど使いやすい機能が揃っている。レンズはドイツのシュタインハイル製カッサー45mmF2.8が付いている。

1959年にフェラーニア最初の35mmカメラとして誕生したのがリンスで、このリンス3は1962年に登場した3代目である。フェラーニアの企画設計で、生産はドイツのDacora社が担当したと言われる。というわけでイタリアとドイツの混血カメラなのだ。これに富士フイルムを入れて写せば、立派な日独伊3国同盟が成立する。

突起を極力無くしたデザイン、ミラーコートしたファインダーのアクセントは、紛れもなくイタリアのセンスで、十分に美しい。ただ、シャッターはB、30、60、125、250だけで物足りないし、距離合わせは前玉回転の目測だ。カメラとしてはいささか面白味に欠ける。国際オークションeBayで落札。イギリスの港町プリンストンから、2010年10月、はるばる海を越えてやってきた。

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亀有にて 1 亀有にて 2

夕方の亀有駅前で、両さんの銅像を撮った。夕方なので絞りは開放、シャッターは一番遅い1/30で、距離は目測という悪条件だが、けっこうちゃんとした写真が撮れた。これは楽しめそうだ。

銀座にて 1 銀座にて 2

目測の距離合わせは初めてなので心配だったが、意外にピントが合うものだ。ユニクロは無限遠だが、赤が美しく写る。カッサーというレンズは、かなりレベルが高いと思う。

カフェテラス 日比谷公園

このカメラの欠点は、ファインダーのブライトフレームが見にくいことだろうか。上のフレームが見にくいので、どうも画面の上側を切ってしまう。これも慣れればうまくいくはずだ。かくして、日独伊3国同盟は、かくかくたる成果を上げたのである。


コンドール T (1950年)

Condor T+Eliog 50mm F3.5
オフィチーネ・ガリレオというイタリア最大の光学メーカーが生産した。1947年の発売である。フィルムメーカーのフェラーニア社の販売網で販売されたものと、ガリレオ社独自のルートで流通したものとがある。写真のカメラはフェラーニアの刻印がないので、ガリレオ社独自のルートで販売されたものと思われる。

ライカのイメージに似ているが、なんとなくクリクリとしていて、イタリアンな雰囲気があるのは面白い。レンズシャッターで沈胴式レンズを採用。フィルムカウンターは底蓋にあるし、沈胴式レンズはいったん引っ張って、さらに一段力を入れて引き出すといった、かなり変わった使い勝手だ。

巻き戻しレバーの前にある小さなダイヤルは、距離計の視度調節ダイヤルだった。レンズのエリオーグは3枚玉のシンプルなものだ。

シャッターはアプロン・ラピッドで、低速から1/500まである当時としては高級なシャッターがついている。小型なカメラだが質感は高い。

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新宿御苑 修善寺桜
シャープさはあまり感じないが、自然の発色で雰囲気のある描写をする。

ネコ1 ネコ2
冬の日だまりにはネコが似合う。ピント合わせで面食らった。ヘリコイドの回転が普通と逆なのだ。反時計方向にいっぱいに回すと無限遠∞が来る。

カンザクラ 描く人、撮る人
新宿御苑の桜は2月から咲き始める。最初に咲くカンザクラは、2月下旬には満開になる。上の写真は2011年2月23日の新宿御苑。

スカイツリー594M 梅とスカイツリー
どうもピントがだいぶ前に来ているようだったので、距離計の調整をした。今度はぴったりだ。

スカイツリー604M 世界一になった空樹(’11.03.04)
2011年3月2日、東京スカイツリーが600Mを超え、世界一の自立式電波塔になった。



コメット V (1953年)

COMET V
銀座松屋の中古カメラショーをぶらついていたら、この不思議なカメラが目についた。強烈な個性を放っていて、私の足は釘付けになってしまった。もっぱら普及版のカメラを作っていたベンチーニというメーカーの製品だが、アルミの一体成形のボディーは、いかにも剛性が高そうで、まぎれもなく高級機の印象である。

しかし、カメラとしては普及機そのもので、レンズは無名の単玉で、焦点距離は60mから70mmぐらい、明るさはF11ぐらいらしい。シャッターはBと1/50だけ、しかも、フィルムはベスト判だという。フィルムが手に入りにくい。散々迷った末、1割まけてもらって購入してしまった。

このモデルにはこのV型のほかに、コメット3というモデルがある。Vは写真のようにブラックフェイスだが、3の方はアルミ地に縦縞という顔つきなのだ。

127カラーネガフィルム
Bluefire Murano iso160
さて、カメラは買ったはよいが127フィルム、いわゆるベスト判フィルムを探さなければならない。フジもコダックも生産中止になっていて、大手カメラ店でもベスト判は置いてない。東京でも浅草の早田カメラ、恵比寿の大沢カメラなど数店でしか手に入らない。私は大沢カメラで手に入れた。消費税込みで1050円。Bluefireという名のカナダ産だという。

さっそくカメラにセットして新宿御苑に出かけた。ファインダーは意外に見やすい。ベスト半裁だから、先に下の赤窓で数字を確認して撮影。次に上の赤窓まで巻き上げて2枚目を撮影する。赤窓はかなり見にくいが、革ケースが工夫されていて、窓の部分がうまいこと見えるようになっている。

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新宿御苑 満開の梅
単玉でシャッターも1/50だけだから、写りを期待してはいけないのだが、まあ、よく写っている。トイカメラに毛が生えたようなカメラだが、そうバカにしたものではない。

河津桜 河津桜
単玉ながら一応前玉回転で距離が合わせられる。これは3月8日に満開になっていた河津桜。1Mの近接撮影でもご覧の通り。

127カラーリバーサルフィルム
Rollei  iso200
リバーサルフィルムはネットで手に入れた。3本セットで3000円。なんとローライブランドのフィルムだ。かって一世を風靡したベビーローライ用なのだろう。

東京スカイツリー609M 新宿御苑
ネガフィルムに比べると発色が鮮やかだ。これも大沢カメラで現像を依頼した。3月6日に現像を依頼し、CDに焼いたのを受け取りに行ったのが3月11日午後2時45分。ちょうど東北沖大地震の起こった時間だ。帰宅難民となってしまった私が、恵比寿から船橋の自宅に帰るのに15時間かかった、私にとって記念すべきプリントなのである。

寒桜 梅も満開
今年(2011)の新宿御苑は、梅よりも寒桜が早く見頃を迎えた不思議な年で、大地震の予兆だったのかしら。それにしてもベスト判は高くつく。リバーサルは現像が1260円、CDに焼くのが1枚120円。16枚分でCD代も含めて2235円。うーん、ちょっとなあ。

ドゥカッティ ソーニョ  (1941年)
 
Ducati Sogno+Vitor 35mm F3.5
イタリアのハーフサイズカメラドゥカッティである。カメラ業界ではデュカッティと呼ぶことも多い。ドゥカッティ社は今ではオートバイで有名だが、カメラを作ったのはオートバイよりも前である。製造年は諸説あるが、ここではStoria della Ducatiにより1941年とする。

とにかく小さい。手のひらにすっぽり入ってしまう。それでいて393gと、ずっしりと重い。ライカをそのまま小さくしたようなカメラだが、フィルムは35mmフィルムを、専用の小さなカートリッジに詰め直して使う。巻き上げも、シャッターも左手側にあるし、距離ヘリコイドもライカとは逆回りだ。

距離計連動だが、ファインダーも距離計も小さくて見にくい。シャッターはフォーカルプレーンで、B、25,50、100、200、500。シャッター幕は固定スリットで、スプリングのテンションだけで、速度を可変する。従って巻き上げ時には、レンズとシャッター幕の間に遮光幕が閉じる。レンズを外してみてみると、この遮光幕は観音開きになっていて、巻き上げ時に閉じ、シャッター寸前に前に開く。なんだか可愛い動きだ。
 


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 法華経寺境内にて  梅の花
小さくて慣れないと恐ろしく撮りにくいが、ハーフ判にしては写りはなかなかのものである。 ただ1/500にするとスプリングが強すぎて、巻き上げに苦労する。私はすぐにあきらめてしまって、1/500は使わないようにしている。
   
   
イタリアの高級機とヴェネシアン・ライカ

イタリアのカメラは美しい。ため息が出るほどに美しい。一度はこんなカメラで写してみたい。憧憬にも似た感情を起こさせるのも、イタリアのカメラだ。中古価格は極めて高価だから、手に入れることは出来ないが、ネットオークションでウインドウショッピングするだけでも楽しい。(価格は2010年10月のヤフオクとeBayでの出品価格)


Rectaflex
$1,716

Rectaflexは1948年にローマで誕生した。ペンタプリズムを持つ一眼レフとしては、最も早い時期のモデルである。その美しいデザインは、昨今の無個性な一眼レフとは、明らかに一線を画していて、圧倒的な存在感を示している。アメリカには非常に多く輸出されたようで、eBayにはかなりの数が出品される。

ヴェネシアン・ライカ

ヴェネシアン・ライカと呼ばれる一群のカメラがある。第2次大戦後、北イタリアで作られたコピーライカの愛称である。ヴェニス北方の精密機械の職人たちが、ライカを作ったのだ。しかし、そこはイタリア、ライカのコピーとはいえ、単なる物まねには終わっていない。メカニズムはライカを範としても、デザインは完全にイタリアンだ。

不思議なことに、このヴェネシアン・ライカは、いずれも数百台しか作られなかったという。中古市場では希少性ゆえに、非常な高値で取引されている。

Gamma
$2,145
Janua
$4,719

Gammaは1947年の発売。ボディー前面に半円筒の突起があるのが特徴だが、これは珍しいメタルフォーカルプレーンシャッターの、シャッター幕の移動量を確保するためだという。またダブルマガジンを採用し、フィルムを巻き戻す必要がない。それにしても、なにかアンバランスなデザインで、私はどうしても好きになれない。

Januaはイタリアカメラの最高級ブランドで、ジェノアのサン・ジョルジョ社の生産。レンズマウントは専用のバヨネットマウントである。精密機械を優雅に凝縮したデザインと、卓抜した仕上げの良さは、所有する満足感が大きいだろうと思われる。それにしても高いなあ。


Sonne
$2,860
ISO Standard
$2,144

Sonneは1948年から作られたカメラで、最初はライカそっくりなデザインだったが、1950年のC型から写真のように角形のファインダー窓に変更した。ゾンネはヴェネシアンライカの中では、デザイン的に見劣りがする。なんだか軍艦部をとってつけたような印象だ。

ISOは、ミラノのIndustoria Scietifica Otticaの略でイーゾと読むらしい。1947年、LUXという35mmカメラを発売したのが最初で、ボディー側のダイヤルで、ピント合わせをするなど、ライカとコンタックスを併せたような機構を持つ。1950年、トリガーレバーを持つビルックスを発売する。さらに小さな改善を施したレポーターを1953年に投入、写真のスタンダードは、そのレポーターからトリガーレバーと低速シャッターを除いた廉価版だが、それでも2千ドルは下らない。


クラシックカメラの物語