世界の妖しいカメラと マイクロフォーサーズの物語

5.潜望鏡で覗くライカ           2010.01.03
ペリフレックス 1 (1954年)

Periflexはイギリスのコピーライカである。Corfield社製。なんと距離計の代わりに、小さな潜望鏡でピントを合わせるという破天荒な機構を持つ。さすが007の国だ。独創的である。それに、かなり妖しい。一種の一眼レフだといえなくはないが、ミラーはピント合わせだけで、ビューファインダーを別に持つ。

最初のモデルは1953年に登場したが、黒塗りに茶色の革張りが美しいカメラだった。わずか12台しか作られなかったので、市場では大変な高値で取引される。我が家へ来たモデルは、1954年発売の黒革貼りになったモデルである。これはこれで十分にカッコイイ。

Periflex 1+Lumar 50mmF3.5
総重量は470gと意外に軽い。
重さはルミックスGF1とほぼ同じだ。
ボディ前面上のボタンがシャッター。

軍艦部
右から巻き上げノブ、シャッターチャージノブ、ペリスコープ、ビューファインダー、巻き戻しノブ。

フォーカルプレーンシャッターなのに、フィルム巻き上げとシャッターチャージは別の動作になる。フィルムを巻き上げてから、シャッターチャージノブをグイッと回転させて、チャージする。チャージした後でノブを引き上げて回せば、シャッタースピードがセットされる。スローはないが、1/30から1/1000秒までついている。

素晴らしいデザインと、面倒な撮影手順

イギリスらしいスマートなデザインだ。初期のライカA型に、ピント合わせのための潜望鏡(ペリスコープ)を付けたような不思議なスタイルである。写真を見て一目惚れして、eBayで落札してしまった。めったに市場に出てこない珍しいカメラだ。

さて、この妖しのカメラ。撮影がやたらと面倒くさい。フィルムを巻き上げて、シャッターをセットし、レンズの絞りを開放にして、潜望鏡を降ろしてピントを合わせ、潜望鏡を戻して、絞りを絞り、ビューファインダーで構図を決め、ようやくシャッターを切る。これがすべて手動なのである。
ペリスコープとビューファインダー
スコープ後ろのレバーを押し下げると、
ミラーが撮像部に開く。
撮像面に降りた潜望鏡
潜望鏡(ペリスコープ)のミラー。
びっくりするほど小さい。

ピントを合わせている間は潜望鏡のレバーを押し続ける。指が痛くなる。高価な距離計を搭載する代わりに、潜望鏡を付けたのだろうが、アイデアは独創的だが、とても使いにくい。

徹底したコストカット

ペリフレックスは世界戦争の申し子だと言われている。イギリス政府は第二次世界大戦の戦備用として、民間のライカを大量に調達した。従って、そのあとには膨大な交換レンズが残された。この交換レンズの活用のために企画されたのが、このペリフレックスである。だが、精密な距離計を準備するには、時間も技術もない。そこで潜望鏡という苦肉の策を採ったのだ。

とにかく安くという姿勢が徹底した設計だ。戦勝国のイギリスなのに、何故ここまでコストにこだわるか信じられないのだが、とにかく半端ではない。裏蓋がぱかっと開くのは良いが、フィルムを送るスプロケットギアが見あたらない。大きなスプールに差し込んで、ただ巻いていくだけ。これで正確なコマ送りが出来るのかしらと、しばし目を疑う。シンクロの配線もむき出しだ。

裏蓋開閉ネジ
格子状の模様の入ったネジを
指先を押しつけるようにして回す。
矢印をポイントに合わすとはずれる。
単純だけど最初はわからなかった。
簡単な巻き上げ機構
スプロケットギアがない。
右の太いスプールに差し込んで
巻き上げるだけ。巻き上げるにつれて
巻き上げ側は太くなっていく。

ペリフレックスを使う先輩諸公から、フィルムの終わりに近づくにつれ、コマとコマの間がだんだん広くなっていくから要注意、とアドバイスされていたので、24枚撮りのフィルムで試し撮りをした。24枚までなら、コマ間の広がりもそれほど気にはならない。

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早すぎた菖蒲 睡蓮
この小さいミラーで、ピントを合わせるのは至難の業だ。悪戦苦闘してやっとものにした。半分以上はピンぼけであった。これはリベンジしなくてはと、闘志をかき立てられるのであった。

皇居 赤いバス
無限遠の撮影はご覧の通り。ピント合わせの必要がないので、大変よく写る。

Periflex 1+Canon 100mm F3.5
ペリフレックスはライカマウントのレンズが使える。手元のキャノン100mmをつけて、難関のピント合わせに挑戦してみる。三脚に固定して慎重にピントを合わせる。咲き始めた花菖蒲を狙ったが、パララックスを忘れていて、構図がイマイチである。

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花菖蒲1 花菖蒲2
今年は花が遅く、小岩菖蒲園はまだちらほらしか咲いていない。それだけ人が少なくじっくり撮れるのだが。

アジサイ ヤブカンゾウ
アジサイとカンゾウもまだ淋しい。今度はファインダーを工夫して、再度挑戦しに来よう。

ペリフレックス 1 (1956年)
Periflex 1+Lumar-x 50mm F3.5
悪のりしてクロームメッキのペリフレックスも落札した。これは届いてがっかりした。アルマイトの弁当箱のようにチープで、精密感が全然無いのだ。写真で見るとカッコイイのに、なんだかお見合い写真にだまされたような感じだった。おまけにシャッター幕が劣化していて、まともな写真が撮れない。

ペリフレックス ゴールドスター (1959年)
Periflex Goldstar+Lumax 50mm F2.8
使いにくいにもかかわらずペリフレックスはよく売れたらしい。1957年にはデザインを一新した3型に発展する。1型に比べると格段に使いやすくなった。フィルムの巻き上げと同時に、シャッターがチャージされるようになったのも大きいが、最大の変更はペリスコープのメカニズムの改良である。上からのぞき込む方式から、もうひとつミラーを付けてアイレベルにした。しかし、プリズムではないから見える画像は左右逆像である。

また、巻き上げと同時にペリスコープが下り、シャッターの切れる寸前に格納されるようになって、押し続ける必要が無くなった。

ファインダーまわりの改良により、背が高くずんぐりとしたデザインになって、1型のスマートさは失われた。3型からシャッターを1/500に抑えた普及型が2型である。

1959年にはレバー巻き上げにした3a型を出し、同時に写真のゴールドスターを発売する。ゴールドスターはシャッターを1/300に抑えた普及型だが、1型に比べるとカメラとしての完成度はかなり高くなっている。

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東京スカイツリー 東京医科歯科大学
1型よりずっと撮り易くなった。完成したスカイツーを真下から狙っても、お茶の水で医科歯科大の病院を狙っても気持ち良く撮れる。ただ、相変わらずペリスコープはピントが合わせにくく、近接撮影は全てピンぼけだった。

東京駅南ドーム 東京駅中央口
姿を現した東京駅のドーム。工事中の写真は今しか撮れないから、晴れた日には何度も撮りに行く。楽しい被写体である。上は2012年(平成24年)5月23日の東京駅である。


ルミックスGF1にLUMAR−Xを付けて
LUMAR-X 50mm F3.5
わずか68gという軽さ。
Lumix GF1+LUMAR-X
GF1によく似合う。

1953年から発売されたペリフレックスは、初期のモデルは軍艦部がブラックであった。1956年以降、軍艦部がシルバー、ボディーが黒革に変わったが、このレンズもそれに合わせて、シルバーと黒革仕上げになった。なかなか小粋な感じだ。L39のライカマウントアダプターに付けて、ルミックスで撮ってみた。
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F8.0 1/1000 iso400
高圧鉄塔
F8.0 1/1250 iso400
五重塔
F8.0 1/640 iso400
赤い車
F5.6 1/100 iso400
一輪車
F5.6 1/1000 iso400
中山大仏
F5.6 1/100 iso400
浄行菩薩
F5.6 1/40 iso400
野良猫A
F5.6 1/80 iso400
野良猫B

もともとのペリフレックスに付いていた時とは、見違えるようによく写る。
LUMAR−X
というレンズはなかなか良いレンズだ。素直で柔らかい描写が好ましい。

とにかく、やたら面倒なペリフレックスのあとで、デジタルのルミックスGF1で撮ると、その快適な撮り心地に我を忘れる。非常に明るいファインダーでピントだけ合わせれば、露出も枚数も一切気にせずに撮影出来る。デジタルの威力を感じる。

巻き上げ、シャッターチャージ、暗く小さいペリスコープでのピント合わせ、絞りとシャッターでの適正露出の計算とセット、すべてに気を遣わせる気難しいペリフレックスの呪縛。

デジタルのGF1に換えると、その呪縛から解き放たれる。その解放感は、実に爽快である。中古の妖しげなカメラと格闘する楽しみは、案外そのギャップの大きさを、改めて感じることなのかもしれない。


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1.金色の偽ライカ 2.本物より高価なコピーライカ 3.ダビデの星とプラクチカ
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