9.不合理なドイツカメラ 2010.03.15
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| ドイツは、世界でもっとも機械工業が発達した国のひとつである。だからドイツ人は合理的かというと、時々、極めて不合理な発想をする民族でもあるらしい。カメラの世界でもその実例はいくつもあるが、ここでは、1950年代の終わりから60年代に、ドイツで流行したレンズシャッター式一眼レフをまな板に乗せよう。 |
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| ベッサマチック |
レチナレフレックス |
バルダマチック |
| (フォクトレンダー) |
(コダック) |
(バルダ) |
上の写真のベッサマチックとレチナレフレックスが、そのレンズシャッター式一眼レフである。そもそも一眼レフは、フィルム面の直前にフォーカルプレーンシャッターを走らせることで成り立っている。シャッターの前に反射ミラーを置けるからである。
ところが、レンズシャッターでそれを実現しようとすると、レンズとシャッターが一体なのだから、シャッターの後ろにミラーを置かなければならない。つまりシャッターを開けなければ、ミラーから反射するファインダーには何も写らない。ファインダーを見ようとシャッターを開ければ、当然ミラーが邪魔をして、フィルム面に光は届かない。フィルムに写そうと思うと、ミラーを上げなければならない。しかし、シャッターを閉じないとミラーは上げられない。
考えただけでも、複雑怪奇で、そんなモノを作って、それをまた買う人がいるというのは、やはり不思議な民族なのである。もっとも、日本でもまねをしたメーカーがあったと云うから、ドイツ人だけを揶揄する訳にはいかないが。
不合理なことはまだある。上の3機種はいずれもレンズシャッターでありながら、レンズ交換が出来る。コンパーというレンズシャッターメーカーデッケル社が提唱したデッケルマウントを採用しているからである。だから、普通ならこの3機種のレンズは、相互に交換が可能なはずである。ところが、それが出来ない。
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| フォクトレンダー用 |
コダック レチナ用 |
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上の写真でご覧のようにバヨネットに噛み合う爪の形状が、メーカーごとに違うのだ。自社のレンズだけしか付けられないようにしてしまったのだ。せっかくのユニバーサルマウントが画餅になってしまった。ユーザーから見ると不合理極まりないが、ドイツ人はそれで平気なのだ。
妖しいカメラシリーズの今回は、その不合理極まりないドイツカメラとの格闘記である。 |
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| コダック レチナレフレックス V |
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| レチナレフレックスV |
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ある日、新宿の中古カメラ屋で物色していたら、写真のレチナのボディーがジャンクコーナーに3千円で並べてあった。ファインダーはかなりくたびれているが、シャッターは生きているようだ。思わず衝動買い。おまけにデッケルマウントのレンズを2本、しめて1万3千円の出費。マイナーなカメラは、1万円ちょっとでカメラとレンズが2本手に入るのだから、嬉しいのだが、塵も積もればなんとやらで、財布は近頃ピンチである。
レチナレフレックスは、RETINAが筆記体で刻印されている最初のモデルと、活字体で刻印されるS、V、Wとは交換レンズの方式が異なる。筆記体モデルはレンズの前玉を交換する方式で、蛇腹式のレチナシリーズとレンズを共用出来る。
S型以降のモデルになると、レンズ全群を交換するデッケルマウントを採用。それまでのカメラとのレンズの互換性はなくなったが、レンズ設計はより自由度を増し性能は向上した。
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デッケルマウント
マウントの下のギヤを回し、ボディー側のピンでレンズ側の絞りを制御する。 |
金属製のしっかりしたボディーで、ボディーの重量は757gとずっしりとくる。クロームメッキも質が高く、いかにもドイツのカメラだという美しい造形である。露出計をよく見ると、GOSSENのネームが読み取れる。シャッターはデッケルのシンクロコンパー、レンズはシュナイダーのクセナー、ボディーはドイツコダック、つまりナーゲル製だ。ドイツの機械技術の粋を集めたと言って良い。3,000円のジャンクだけれど露出計は生きていた。
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テレ クセナー135mm F4
金属鏡胴の大口径レンズ
重量は320gある。 |
コダック レチナレフレックスV
堂々たる勇姿。
重量は1,077gと貫禄十分だ。 |
レチナレフレックスに135mmのクセナーをつけて、江東区の横十間川親水公園を散歩した。このカメラはボディーの下に巻き上げレバーがある。最初ちょっと戸惑う。
フィルムカウンターを1枚目にしてシャッターを切る。うまく撮れた。ところが、そのまま固まってしまって巻き上げが出来ない。ジャンクだからやっぱりダメだったかと、あきらめかけたが、もしかして、このカウンターは逆算式ではないかと思い当たった。36に合わせて撮るたびにカウンターが減っていき、1になると巻き上げが出来なくなるのだ。カウンターを戻して35にしたら、巻き上げが出来るようになった。冷や汗。
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ボディ下部
中央がフィルムカウンター。右のボタンを
←に動かすとカウンターが減っていく。
カウンターの手前のギヤで絞り調節。 |
ボディー上部
露出計表示窓。下のギヤで針を中央に。
レンズの赤い針は被写界深度を示す。
シャッターボタンはボディー前面。 |
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まずはホッとして、次に、シャッターリングを回して1/500に合わせる。シャッターリングの下側のギヤを回して、露出計の針を中央に持ってくる。これで適正露出になる。シャッター優先で絞り調節をしているわけだ。この時、赤い針がレンズ鏡胴を動いて被写界深度を表示する。この辺のからくりは面白い。
ファインダーは汚れがあって非常に見にくいが、中央のスプリットイメージは見やすく、上下像合致式でピントは合わせやすい。ファインダーの中にも露出計が現れるのは便利だ。
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| (クリックすると大きくなります。) |
| フィルムはFUJIのSuperia PREMIUM400、現像とCDは45Digital Conびni西船橋店。 |
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F8.0 1/500 iso400
霞む東京スカイツリー |
F8.0 1/500 iso400
横十間川 |
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F8.0 1/500 iso400
河童の小僧 |
F8.0 1/500 iso400
日本橋 |
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F8.0 1/500 iso400
ノラ |
F8.0 1/500 iso400
中山大仏 |
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| Xenar 45mm F2.8 |
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クセナー45mm F2.8
ヤフーオークションで6,800円。
後玉がかなり飛び出しているのが特徴
非常に美しいレンズだ。 |
標準レンズを付けたレチナ
さすがにバランスが良く端正な機能美。
総重量は849g。
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レチナに付けられる標準レンズを探していたら、クセナー45mmがヤフーオークションに出品されていた。後玉が大きく飛び出した小型のレンズで、惚れ惚れするような美しいレンズだ。早速レチナに付けて春を探しに出かけた。
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| (クリックすると大きくなります。) |
| フィルムはFUJIのSuperia PREMIUM400、現像とCDは45Digital Conびni西船橋店。 |
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F5.6 1/500 iso400
シュゼンジカンザクラ |
F11 1/500 iso400
巨大な白木蓮 |
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F4.0 1/500 iso400
アカンベー猫 |
F8.0 1/500 iso400
3匹の子猫 |
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F11 1/500 iso400
東京スカイツリーと東武電車 |
F11 1/500 iso400
墨田川 |
撮っていておかしなことに気がついた。135mmと45mmでは、同じクセナーなのにフォーカスリングが逆なのだ。45mmは反時計方向に回すと無限遠になるのだが、135mmは近距離になるのだ。最初は気がつかなかったが、どうも変だと思ってリングを見たら、完全な逆回しになっている。この辺もドイツ人の不合理なところだ。同じメーカーの同じマウントのレンズが、フォーカスリングが逆向きだなんて、日本では絶対にあり得ないだろうな。
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