世界の妖しいカメラと マイクロフォーサーズの物語

10.共産党革命記念ライカ        2010.04.02

世界を震撼させたロシアの共産党革命は、1917年10月25日であった。2月にロマノフ王朝を倒したロシア革命政府は左右両派に分裂、半年にわたる内部抗争の末、ついに左派のボルシェビキがレーニンを首班とする共産党政権を樹立したのだ。

それから50年、1967年にソ連は、10月革命50周年を盛大に祝った。当時はフルシチョフの後を継いだブレジネフ書記長の時代で、東の超大国としてアメリカと対峙していた。私の手元にあるこのカメラは、共産革命50周年を記念して、ゾルキー4に赤い記念マークをあしらったものである。

ゾルキー4は、ソ連の国力が充実していた頃のカメラで、それまでのバルナックライカの模倣を脱して、非常に使いやすく設計されている。

Zorkiy4+Jupiter−8 50mm F2
ゾルキー4の後期モデルだ。
ジュピター8 50mmはゾナー50mmの
デッドコピーで3群6枚構成。このレンズが
付いてヤフーオークションで7千円だった。
50周年記念の表示
1967年製。10月革命50周年記念の
赤い表示とKMZのマークが目に付く。
キリル文字ОКТЯБРЬは10月
という意味らしい。オクタブルかなあ。


世界で最も売れたライカ

このゾルキー4ライカM3に刺激されて、設計されたのは間違いなかろう。距離計窓とファインダーを一体化し、シャッターセットも一軸にまとめ、裏蓋着脱式にしてフィルム装填を容易にしている。ひとつ前のゾルキー3で、バルナックライカの模倣から脱し、その設計をさらに進めて、このゾルキー4でほぼ完成されたといって良い。

着脱式の裏蓋
完全に裏蓋が外れるので、
フィルム装填は容易だ。
視度調節レバー
巻き戻しノブの下に視度調節レバーが
ある。非常に使いやすい。

多少大型になったが工作精度は悪くない。ソ連圏諸国に盛んに輸出されたらしく、1956年から1973年まで18年間にわたり、171万台が生産されたという。おそらく世界で最も売れたコピーライカと言って良いであろう。しかし、冷戦終結までは、鉄のカーテンに遮られて、西側諸国にはほとんど知られていなかった。妖しきカメラ、幻のカメラであったのである。

ただ、ソ連カメラの常なのだが、年を重ねるに従って精度、品質が低下する。このゾルキー4も前期と後期とでは、かなり改善?されている。私の手元に来たゾルキー4は後期モデルで、ボディー前面のЗоркий(Zorkiy)というキリル文字やシャッタースピードの表示が、刻印から印刷に変わり、スローの部分は剥げてしまって読めない。距離計も無限遠で二重像が合致しないので、多分狂っていると思う。近距離の解放では使い物にならない。

Jupiter-8 50mm F2.0

第2次世界大戦後、ドイツから接収したカールツアイス社の技術で生産されたレンズで、名玉ゾナー50mmF2のデッドコピーである。コンタックスのラインで作られたキエフの標準レンズであったが、のちにライカマウントでも供給された。

左:ライカマウント  右:キエフマウント

ゾルキー用とキエフ用の2本のジュピター8である。同じレンズとは思えないほど印象が違う。
絞りにクリック感がないので、ピントを合わせている時に絞りが動いてしまう。慣れが必要だ。

(クリックすると大きくなります。)
フィルムはFUJICOLOR 100、現像とCDは45Digital Conびni西船橋店。
F5.6 1/500 iso100
ポーズ!
F5.6 1/500 iso100
帰り道
F8.0 1/500 iso100
ノラA
F8.0 1/500 iso100
ノラB
F8.0 1/1000 iso100
春の東京スカイツリー
F8.0 1/1000 iso100
アサヒビールビルに写るスカイツリー

レンズ付き7千円のカメラで、これだけ写れば文句はない。まさに労働大衆のためのライカの面目躍如たるモノがある。西側ではプアマンズライカといって蔑んだが、これは間違いなく、名機である。私の愛用機になりそうだ。


ルミックスGF1にJupiter-8 50mm F2.0を付けて


ジュピター8を付けたGF1

ジュピター8を、L−MリングとレイコールのM−M4/3アダプターとでルミックスGF1に付けて、デジタル写真を楽しむ。春まだ浅き千鳥ヶ淵と、亀戸天神を散歩した。

(クリックすると大きくなります。)
F2.0 1/250 iso100
ハナダイコン
F5.6 1/60 iso400
千鳥ヶ淵
F5.6 1/200 iso200
アオサギ
F5.6 1/250 iso200
亀戸天神の猫

50mmレンズは、GF1に付けると100mmの画角になる。ちょうど境内の池に飛来したアオサギと、この宮に居着いた猫を狙った。100mmの画角は、こういう被写体に最適である。

F5.6 1/250 iso200
亀戸大根の碑
F5.6 1/2000 iso200
亀戸天神から見る東京スカイツリー

1917年の共産党革命から100年、50周年を祝ったこのカメラが作られてからでも、半世紀近い歳月が流れた。ソビエト連邦は、1991年、革命から100年を待たずに崩壊したが、革命を記念したゾルキー4は、遠く日本の首都にあって、のどかで平和な春を記録している。


妖しきカメラとマイクロフォーサーズの物語
1.金色の偽ライカ 2.本物より高価なコピーライカ 3.ダビデの星とプラクチカ
4.世界最小の一眼レフ(1) 5.潜望鏡で覗くライカ 6.裏窓を覗く左利き一眼レフ
7.世界最小の一眼レフ(2) 8.哀しきコンタックス 9.不合理なドイツカメラ
10.共産党革命記念ライカ 11.孤児院で作られたライカ 12.不当に安いキャノン

ルミックスGF1を5倍楽しむ法 オールドレンズを楽しむ 35mmカメラの世界史 クラシックカメラの物語

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