世界の妖しいカメラと マイクロフォーサーズの物語

6.裏窓を覗く左利き一眼レフ        2010.01.15

1954年(昭和29年)のヒッチコックの名作「裏窓」で、カメラマンに扮するジェームス スチュワートが、アパートの裏窓から望遠レンズでのぞき見をする有名な冒頭シーン。このシーンで主役を演じたカメラが、エクサクタである。若かりし日のグレース ケリーの美貌と共に、忘れられない場面である。

裏窓(1954年のハリウッド映画)
監督:アルフレッド ヒッチコック
主演:ジェームス スチュワート
    グレース ケリー
エクサクタ VXUa
銀座レモン社で手に入れた。
ファインダーがくたびれていたけれど
程度は悪くない。


面白いメカがいっぱいの元祖一眼レフ

エクサクタは一眼レフの元祖と云われる。Exaktaはドイツ語読みでエクサクタ、英語読みだとエグザクタ。日本ではエキザクタが一般的かもしれない。1936年(昭和11年)の誕生である。ベスト判一眼レフを造っていたドイツドレスデンのイハゲー社が、35mm判シネフィルムを使う一眼レフを世に出したのだ。キネエクサクタと呼ばれた35mm版一眼レフの元祖である。

当時、すでにライカやコンタックスが、35m判カメラで確固たる地歩を築いていた。その2大牙城に、一眼レフのほか数々の新機構を採用して、敢然と挑んだのがオランダ資本イハゲー社のエクサクタであった。第2次大戦後、ドレスデンは東ドイツとなり、ツアイスもプラクチカも人民公社化される中で、イハゲーだけはオランダ資本であったのが幸いして、人民公社化されずに生き残った。東独の製品としては品質、性能、デザインとも優秀で、西側諸国で高く評価され、エクサクタの挑戦は成功を収めた。

1950年(昭和25年)、ペンタプリズムを搭載したエクサクタ ファレックスが登場する。アメリカ向けにはエクサクタ VXとして輸出された。

軍艦部
左側に巻き上げレバー、シャッターダイヤル
ボディー前面左にシャッターボタンがある。
右はスローシャッターとセルフタイマー。
交換可能なファインダー
簡単にファインダーが交換出来る。
ウエストレベルとプリズムファインダーが
選択可能。

このカメラ、何故か左側に巻き上げレバーや、シャッターが付いている。設計者が左利きだったからなどという俗説がある。実際はパララックスが無い一眼レフであるために、スナップや報道用よりは、図面や書類の複写など研究用で使われることが多かった。複写機にセットして撮影するには、左側に操作系を集めた方が使いやすい。そのためであろうというのが、エクサクタ左利きの種明かしである。

ファインダーはアイレベルと、ウエストレベルの交換式で、中央にスプリットイメージが組み込まれており、上下に分かれたターゲットを合致させることによってピントを合わせる。

裏蓋開閉ネジ
ボディー底の裏蓋開閉ノブを引っ張ると
裏蓋が完全に開くから、フィルム装填は
楽だ。
巻き戻し
底面の巻き戻しノブの中央を押し込むと
パトローネに嵌る。それから巻き戻す。
上面の巻き戻しボタンを押しながらだから
結構力がいる。

フィルムの装填は楽だが、巻き戻しは注意を要する。巻き戻しノブの左上の小さなネジに触れないこと。このネジを引っ張ると、なんとカメラの中でフィルムが切断されてしまう。フィルムが貴重だった頃の名残だが、かなり危険なメカニズムである。

次に巻き戻しノブの中央を押し込む。これをしないと巻き上げているつもりでも、空回りしているので要注意。中央部分を押し込むことによって、パトローネにかみ合う。その上でシャッターダイヤルの手前にある小さなボタンを押しながら、巻き戻しノブを回すと巻き戻される。
逆に撮影中フィルムを巻き上げる時に、ここを押し込むと巻き上げ出来なくなる。


WESTROCOLOR 50mm F1.9

レモン社で買ったエクサクタに付いてきた。エクサクタ独特のプリセット絞りが面白い。

絞りリングで絞りを合わせる。レンズ左の絞りセットリングを回して、グリーンのマークを合わせると、絞りは開放になる。このリングを押すと絞りが絞られ、さらに押し込むとシャッターが切れる。要はデジタルカメラのシャッターボタン半押しの効果を、メカニカルに実現しているわけだ。70年前のメカは実に面白い。

ヴェストロカラー50mm F1.9
西ドイツのイスコ ゲッチンゲン社製。
エクサクタ独特のプリセット絞り付。

プリセット絞りリング
このリングを回してグリーンのマークを
下の点に合わせる。

(クリックすると大きくなります。)
フィルムはFUJIのSuperia PREMIUM400、現像とCDは45Digital Conびni西船橋店。
F8.0 1/1000 iso400
高圧鉄塔
F5.6 1/125 iso400
一輪車

シャッター幕がくたびれているようで、シャッターを切ったままでミラーを上げておくと、光線漏れが起きる時がある(上左)。必ず巻き上げてミラーをおろしておくと安心だ。

F8.0 1/500 iso400
インコ
F8.0 1/500 iso400
瞑想するネコ
F5.6 1/250 iso400
観音像
F5.6 1/250 iso400
観音像
F8.0 1/1000 iso400
中山大仏
F8.0 1/1000 iso400
五重塔

クリアーですっきりした描写だ。ごつい外観とはずいぶん印象が違う。爽やかで立体感のある写真が撮れる。これは掘り出し物である。


ルミックスG1にWESTROCOLORを付けて

マイクロフォーサーズのルミックスG1に、エクサクタ用のヴェストロカラー50mmF1.9を付けて、日比谷公園を散歩した。エクサクタ独特のプリセット絞りが意外に使いやすい。快適に散歩スナップが出来る。

エクサクタ−M4/3アダプター
ヤフオクで9.800円。少し高いな。
レアものだから仕方ないか。
ヴェストロカラーを付けたルミックスG1
なかなかかっこいいじゃありませんか。
プリセットボタンが印象的だ。
(クリックすると大きくなります。)
F5.6 1/3200 iso400
日比谷交差点
F5.6 1/2000 iso400
街路灯
F5.6 1/800 iso400
日比谷のノラ
F8.0 1/250 iso400
冬の花壇


Biotar 58mm F2.0
ビオターをつけたエクサクタ

カール ツアイスの名玉ビオターである。機械的なプリセット絞りは上と同じである。雨上がりの曇り空を狙って、解放近くの描写を試してみた。谷津バラ園の薔薇の花である。いずれも絞りはF2.8、シャッターは1/1000である。

(クリックすると大きくなります。)
バラ1 バラ2
バラ3 バラ4

絞りをF8に絞って、公園の秋を撮ってみた。
落ち葉1 落ち葉2
枯れ葉 落ち葉3


Tessar 50mm F2.8

カールツアイスの名玉テッサーが、ヤフーオークションに出品された。なんと4.500円。
エクサクタマウントは需要が少ないので、名門ツアイスのレンズもジャンク並みの価格で手に入る。これは嬉しい。早速落札した。

テッサー50mm F2.8
エクサタマウントだが、プリセット絞りは
通常のリング式だ。
テッサーを付けたエクサクタ
金属鏡胴がエクサクタによく似合う。

(クリックすると大きくなります。)
フィルムはFUJIのSuperia PREMIUM400、現像とCDは45Digital Conびni西船橋店。
F8.0 1/500 iso400
高圧鉄塔
F8.0 1/500 iso400
赤い車
F8.0 1/500 iso400
五重塔
F5.6 1/500 iso400
中山大仏
F5.6 1/125 iso400
ネコ募金
F8.0 1/500 iso400
お面
テッサーらしいシャープな描写だ。発色も鮮やかで、とても半世紀前のレンズとは思えない。


ルミックスGF1にTessar50mm F2.8 を付けて
テッサー50mmF2.8+アダプター ルミックスGF1+テッサー50mm

このテッサーは114gとたいへん軽量である。小型のルミックスGF1に良くフィットする。
エクサクタにつけて撮った写真に比べて、なんとなく柔らかな印象になるのは、気のせいだろうか。
(クリックすると大きくなります。)
F8.0 1/1600 iso400
五重塔
F8.0 1/400 iso400
中山大仏
夕日に照らされた五重塔と大仏。テッサーは朱塗りの塔の妖しい雰囲気、大仏の神々しさを、くっきりと表現する。半世紀以上経って、デジタル時代に入っても、名玉の評価は揺るがない。

F5.6 1/125 iso400
観音像
F5.6 1/60 iso400
荒行堂
F5.6 1/400 iso400
ネコ募金
F5.6 1/320 iso400
考えるネコ


妖しきカメラとマイクロフォーサーズの物語
1.金色の偽ライカ 2.本物より高価なコピーライカ 3.ダビデの星とプラクチカ
4.世界最小の一眼レフ(1) 5.潜望鏡で覗くライカ 6.裏窓を覗く左利き一眼レフ
7.世界最小の一眼レフ(2) 8.哀しきコンタックス 9.不合理なドイツカメラ
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